診療科目等のご案内

上部消化管内視鏡について(消化器内科・消化器外科・一般外科)

上部消化管疾患の現状と内視鏡検査の重要性について

ヘリコバクターピロリ(菌)感染と慢性胃炎と胃癌

日本は、世界的には胃癌の多い国であり、その多くが、 ヘリコバクターピロリ(菌)感染 → 慢性胃炎(萎縮性胃炎) → 胃癌 という機序で発生しています。

往年のヘリコバクターピロリ感染率は、1960年以前生まれの世代では感染率50%ほどと極めて高い感染率でしたが、その後、衛生状態の改善に伴って激減し、1990年以降生まれの世代では、10%未満(報告によって3%から9%)まで改善しています。

しかし、未だに撲滅はされておらず、感染の主な原因は5歳までの幼少期における母子感染と言われています。ヘリコバクターピロリ(菌)の撲滅は、本邦における今後の課題と言えます。

胃癌発生数の動向

今後長期的には、胃癌の発生が減少してくることが予想されますが、残念ながら、2016年時点においての胃癌発生は年間13万人で未だに微増傾向、年間死亡者数4万人台と横ばいであり、さまざまな癌種の中で胃癌による死亡者数は第3位になります。

胃酸分泌関連の疾患の増加

ヘリコバクターピロリ(菌)感染率低下の一方で、近年増加しているのが、逆流性食道炎など胃酸分泌関連の疾患です。

今後は、逆流性食道炎→バレット食道→食道胃接合部癌といった、欧米型の発癌も問題となってくることが予想されます。

胃癌発生率低下あるいは早期発見を目指した対策

重要なことは、ヘリコバクターピロリ(菌)感染者は、感染期間が短いうちに慢性胃炎(萎縮性胃炎)を発見して、除菌を行うことで、慢性胃炎の改善、胃・十二指腸潰瘍の予防が行えるとともに、少しでも発癌の可能性を減らせること(※)です。

また、感染歴がある方は、胃癌発癌の高危険群であることを認識して、定期的に内視鏡での経過観察を受けること、逆流性食道炎など胃酸分泌関連の疾患の方も、適切な治療を受けつつ、定期的に内視鏡での経過観察を受けることです。

(※)若年のうちに除菌を行うほど発癌率の低下効果は大きいと見込まれますが、それでも、未感染者(感染歴のない方)と比べると発癌の危険性は高く、除菌後も経過観察が重要であることは言うまでもありません。万一、胃癌が発見されてしまった場合でも、早期発見により、低侵襲で根治的な治療が受けられることが目標です。

上部消化管内視鏡(経口・経鼻)の実際について

通常径の内視鏡(経口)

通常径の上部消化管内視鏡(直径9mm)は高画質の観察が可能ですが、2017年にレーザー光を使用した内視鏡装置に更新し、精度が向上し、詳細な精査の際の有効性がますます高まりました。
その一方で、どうしても挿入に伴う苦痛(咽頭反射など)は残ってしまっています(個人差あり)。
必要に応じて沈静薬の使用も相談致します。

細径内視鏡(経鼻・経口)

細径内視鏡(直径5.9mm)(初回は2007年導入)を使用した経鼻内視鏡(あるいは細径内視鏡の経口挿入)では、挿入に伴う苦痛(咽頭反射など)は著明に軽減されており、また、2017年にレーザー光を使用した内視鏡装置に更新することにより、細径内視鏡であってもかなりの高画質が得られるようになりました。

面積比は経口内視鏡の39%

内視鏡の径が細いため、鎮静薬(※)の使用を要することはほとんどありません。

(※)必要時は鎮静薬の使用も相談可能です。

上部消化管内視鏡(経口,経鼻)の検査の流れ

上部消化管内視鏡(経口,経鼻)の検査の流れ

1.外来受診
症状のある方、健診異常等で要精査の方は、まず外来受診(※)されて下さい。

紹介状あるいは健診結果をお持ちの場合は、ご持参願います。
検査の相談、日時の予約、文面での説明を致します。
普段の内服薬の内容を確認させていただきます(お薬手帳あるいは薬剤情報提供書を参照させてください)。
必要に応じて血液検査のため採血させていただく場合もあります。
局所麻酔薬も含め、お薬アレルギーのある方は、お伝えください。

(※)午前外来は事前の電話予約も可能です(診察券番号のある方のみ)。 午後外来は受け付け順です。

2.検査当日 朝

朝食は摂取しません。水分(お水,お茶など透明なもの)は摂取可能です。
内服薬は、糖尿病の血糖降下剤など休薬していただく必要のあるお薬もあります。
特に指示がなければ、必要なお薬は通常どおり内服していただくことができます。
ただし、お薬を内服された際には、十分な量の水分を摂取していただき、お薬が胃の中に残っていないようにご配慮ください。

<補足>
  • 検査当日朝のお薬の内服については、事前の説明の際に説明することになっていますが、万一不明な際はお問い合わせください。
  • お薬内服後の水分摂取量が足りないと、お薬が胃の中に残ってしまうことがありますので、十分な水分を摂取されてください。
  • 抗血栓薬の内服がある場合も、基本的に内視鏡での観察が可能です。
    ただし、生検(組織の採取)が必要な場合は、抗血栓薬の種類によっては、事前に休薬が必要な場合もあります。
    休薬を要する場合の基準は日本消化器内視鏡学会のガイドラインを基本としますが、詳細は、事前に外来で説明を致します。
3.検査当日 受付

検査の準備および前処置の都合上、検査予約時刻の30分前の到着をお願いしております。
診察券で自動受け付け機での受け付けができます(窓口でもできます)。

4.前処置と内視鏡検査

検査室でも、本人確認等のため、診察券をご提示ください。
消泡剤(胃の中の泡を消すお薬)の内服、咽頭部麻酔、経鼻の場合は鼻腔への血管収縮剤噴霧(鼻腔を広くするためと鼻出血予防)と麻酔を行います。
ご希望の場合は鎮静剤の使用もご相談致しますが、安全な範囲内での使用とさせていただきます。

<補足>
  • 経鼻ご希望でも、鼻腔がスコープの径よりも狭い方、鼻炎などで普段よりも狭くなっている方、鼻出血の心配がある場合は、経鼻での検査ができませんが、その場合は、細径内視鏡の経口挿入で検査致します。
  • 近年は鎮痙剤(消化管の動きを止めるお薬:ブスコパン®など)の注射は基本的に使用しておらず、それによる副作用の心配はありません。
    稀に精密検査の際に使用することはあり得ます。
5.結果説明

基本は当日検査後の結果説明になります(結果説明の外来予約が後日になっている場合は後日になります)。
検査で生検(組織の採取)も行った場合は、病理組織診断の結果は約1週間後になります。

6.追加検査

慢性胃炎(萎縮性胃炎)や胃・十二指腸潰瘍など、ヘリコバクターピロリ(菌)感染が疑われる所見の場合は、菌の存在を確認する検査を追加して行うこともできます。 第一選択は精度の高い尿素呼気試験(※)という検査法ですが、血清抗体(血液検査)で行う場合もあります。

(※)内服しているお薬の種類によっては尿素呼気試験ができない場合もあります(プロトンポンプ阻害薬=PPIという類のお薬を内服中の場合)。

ヘリコバクターピロリ(菌)除菌について

ヘリコバクターピロリ(菌)の感染確認から除菌までの流れ

ヘリコバクターピロリ(菌)の感染確認から除菌までの流れ

1.感染確認

有症状、健診異常等で要精査にて、上部消化管内視鏡(経口または経鼻)で、慢性胃炎(萎縮性胃炎)、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫などの、ヘリコバクターピロリ感染が疑われる診断がついた場合は、まず、ヘリコバクターピロリ感染確認の検査を行います。
内視鏡検査の当日に、追加検査として行う場合が多いです。
第一選択は精度の高い尿素呼気試験(※)という検査法ですが、血清抗体(血液検査)で行う場合もあります。

(※)内服しているお薬の種類によっては尿素呼気試験ができない場合もあります(プロトンポンプ阻害薬=PPIという類のお薬を内服中の場合)。
なお、検診(いわゆるABC検診など)で、既に、ヘリコバクターピロリ感染の確定診断がついている場合は、上部消化管内視鏡検査(経口または経鼻)のみ行い、再度の感染診断は行いません。
検査結果で、陽性になった場合は、除菌治療の適応になります。

<補足>
  • ヘリコバクターピロリに関する検査や治療においては、内視鏡を行って、慢性胃炎(萎縮性胃炎)、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などのヘリコバクターピロリ関連の診断がついていることが必須となっています。
    また、医学的にも、ヘリコバクターピロリ感染が確認された時点で、胃癌がなかったかどうか内視鏡で確認しておくことが重要です。
  • 検診で行った方法が尿抗体法の場合は、疑陽性が多く精度が低いため(特に濃縮尿や蛋白尿のある場合そうなりやすい)、精度の高い方法(尿素呼気試験あるいは血清抗体など)でやりなおして、本当に感染があるのか、確定診断をつける必要があります。
2.1次除菌

1次除菌は、3剤併用療法(ボノプラザン,アモキシシリン,クラリスロマイシン)を朝夕7日間内服する方法になります。
比較的目立つ副作用は、抗生剤投与による下痢などです。
アモキシシリン(合成ペニシリン系)のアレルギーの方は、この投与法は行えません。

3.1次除菌の効果判定

除菌のお薬の内服が終了して1カ月経過以降に、除菌ができているかどうかの検査を行います。
基本的には精度の高い尿素呼気試験を行います。
効果判定で、陰性になった場合は、除菌成功です。1次除菌での成功率は、現在の投薬法において、約90%です。

<補足>
  • プロトンポンプ阻害薬=PPIを内服中の場合は尿素呼気試験ができませんので、必要あれば、除菌内服後は、PPIからH2受容体拮抗薬に切り替えておく、といった調節が必要になります。詳細は外来担当医にお任せください。
4.2次除菌(1次除菌失敗の場合)

1次除菌で万一失敗の場合は、2次除菌として、3剤併用療法(ボノプラザン、アモキシシリン、メトロニダゾール)を朝夕7日間内服する方法になります。
2次除菌内服期間中の飲酒は重大な副作用をきたすことがありますのでお控えください。
比較的目立つ副作用は、抗生剤投与による下痢などですが、頻度は低いもののメトロニダゾールによる神経のしびれなども要配慮です。

5.2次除菌の効果判定

除菌のお薬の内服が終了して1カ月経過以降に行い、内容は、1次除菌の効果判定と同じです。
1次除菌-2次除菌を合わせた全体での成功率は、現在の投薬法において、約99%です。

6.除菌後の経過観察

除菌が成功しますと、慢性胃炎(萎縮性胃炎)の状態の緩徐な改善、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防効果が得られます。
胃癌の予防効果については、感染年数が短い方(比較的若年で除菌された方)ほど予防効果が大きいと言われますが、未感染者(感染歴のない方)と比べるとどうしても発癌の危険性が高く、除菌後も経過観察が重要であることは言うまでもありません。
定期的な上部消化管内視鏡(経口または経鼻)での定期的検査が推奨されます。

7.アモキシシリンアレルギーの方の除菌

1次除菌でも2次除菌でも、除菌のお薬の中にアモキシシリン(合成ペニシリン系)が含まれ、これに対してアレルギーのある場合は、残念ながら、健康保険を利用した除菌治療はできません。
ご希望の場合は、自費診療での相談は可能です。

8.3次除菌(1次-2次除菌失敗の場合)

1次-2次除菌までの成功率は約99%ありますが、万一、それでも除菌できなかった場合、3次除菌については、残念ながら、健康保険を利用した3次除菌はできません。
ご希望の場合は、自費診療での相談は可能です。

医療法人社団永寿会三鷹中央病院

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